問いかけ/草野春心
 


  きみはぼくに
  ただ一言の問いかけをした



  夏、
  夕暮れのきつい光が
  少しだけ漏れる部屋で
  きみはぼくに問いかけをした
  どんな手がかりも
  どんな秘密もない、
  白くて硬い問いかけだった
  小さな丸いテーブル
  灰皿のなかで煙草は燃え
  ぬるい風は時間をがりがり削り取り
  誰かが何処かで服を脱ぎ、
  ふたたび身に着けるときのような
  かすかな気配がして



  きみはぼくに問いかけをした
  ぼくは、
  なにひとつきみに問わなかった
  夏の夕暮れがテーブルから
  鮮やかな色を奪って
  部屋の床に叩きつけた
  強く、
  強く、だけど
  かなしいぐらいしずかに



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