問いかけ/草野春心
きみはぼくに
ただ一言の問いかけをした
夏、
夕暮れのきつい光が
少しだけ漏れる部屋で
きみはぼくに問いかけをした
どんな手がかりも
どんな秘密もない、
白くて硬い問いかけだった
小さな丸いテーブル
灰皿のなかで煙草は燃え
ぬるい風は時間をがりがり削り取り
誰かが何処かで服を脱ぎ、
ふたたび身に着けるときのような
かすかな気配がして
きみはぼくに問いかけをした
ぼくは、
なにひとつきみに問わなかった
夏の夕暮れがテーブルから
鮮やかな色を奪って
部屋の床に叩きつけた
強く、
強く、だけど
かなしいぐらいしずかに
戻る 編 削 Point(8)