少年A  /イナエ
 
バーはフルヘル脱いで
 いたづらっこの笑顔をみせた
 「免許取ったか」怒鳴るわたしに
 きみはひとこと 言葉を残してにげ去った
 「おれ頭悪から…」

宇宙の片隅の小さな星の交差点
たくさんの車も人もすれ違っていくのに
どうして人は激しい出会いをするのだろう

きみの前に飛び出た少女が跳ね上がったとき
きみのバイクも乗用車の前を滑っていた

翌日
きみは十二階のベランダから空へ飛んだ
「ここにいると みんなに迷惑かかるから」と…

きみは羽ばたくことなく人生を閉じたけれど
わたしの中では
ひしゃげた顔でバイクに乗って
いまも駆け回っている  



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