赤いポストと遠い夜/千月 話子
 
を選びます
 体重計に乗ってから鏡の前でポーズを取る少女
 湯船にはつま先からゆっくり入っていかないと
 びっくりして だるま落とし
冷やされたビン入りコーヒー牛乳が飲みたかったんです


小さな小さな本屋さんは 50円〜100円で借りられる
ビニールのブックカバーに包まれて
小さなおばあさんが 小さなノートに
顔見知りの子供の名前と まんがの題名と
計150円の文字を くしゃくしゃっと書いています




赤い円柱形のポストに入れた 手紙の文字から
くるん と角が取れていく一日の終わり

聖夜に集められて 尖った気持ちが空に登って行ったので
まばたきした細い隙間から 切手を貼り忘れた遠い景色が
きらきら と 時折戻ってきたりするのです
 
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