たとえちいさな光でも/千波 一也
 
泣き続けるだけの
赤子がある

かわく間もなく
こぼれ続ける涙をおもうとき
わたしはわたしの無力さに
なお胸を痛める

「おまえは良かったね」
「おまえは幸せだね」
「おまえは恵まれたね」

わが子にかけるどんな言葉も
後ろめたくて仕方ない

けれど
眠りはじめたわが子のために
その身に宿る夢のために
わたしはこの腕を
けっして解かない

たったひとつだけれど
たったひとつの拠りどころなら
わたしはかならず
失くさずにいよう

ほかでもない
わが子のために

たとえ
狭い、と責めたてられても
のちの道へと続いてゆけ、と
わたしはたしかに
灯っていよう






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