羊の手/まきしむ
握るとあたたかい
いとしめやかな香りです
風の音のほか何もしない
草原を共に歩いていました
褐色の山々に向かい
下手な口笛を吹きました
あな、やわらかい、ふにゃふにゃしているから
何度も立ち止まらせ、足をにぎにぎ、
されるの、イヤみたいです
ウェエエエエエエエと鳴き体をぶるっと
でもほかに何もやることがないんよ
無給残業だもんよ ひどいもんさ
父さんの金を食いつぶし生きている
雨が降ってきました
無数の音の重なりが
分厚い層を作り
その中をモーセのような気分で突進
しかし何事も起こらぬ
変わらず草原がどこまでもどこまでも
触れられぬ山々
空が痛々しいほどに響いて
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