無くしたものとの対話/殿岡秀秋
 
しまっておいた物が見つからない
きっとかくれんぼをしている

不意に見つかるときは
隠れているのに飽きて
そろそろ見つけてよ
と言いたげに現われる

普段からよく使う
机の引き出しから出てきて
整理が悪いあなたのせいだと
舌を出す

その間
どこで遊んでいたのだろうか
きみを見つけられなくて
探しあぐねてぼくは考えこんでいた

気持ちにゆとりがないのね
コマネズミのように落着きがなくて
眼の焦点がぼけていて
見落としてばかりいるのよ

きみがいない間
ぼくはきみの形の穴を
こころにあけたままだった
冷たい風がはいってくる

でも忘れていたでしょう
探している雰囲気を
感じなかったもの
わたしはひとつところにじっとしていたのに

きみを探してばかりはいられないのだよ
きみがいないことで
日常がまわっていかなくなっては困るのだよ

私の影が薄くなっていく
いなくなれば想いだすこともないでしょう
またかくれることにするわ

そうはさせないぞ
力をいれてつかんだら
壊れてしまった







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