【HHM参加作品】「荒地」/すみたに
 
冬がやってくる。冬の雪が覆うのは、言葉と言葉の切れ目、凍りつく醜い言葉たち、手放しに、あるいは計画的に小賢しく言葉にされてきたものたち。「荒野という緑の極地」という一見矛盾らしく見える言葉も、最初に述べたように、放置され、野放しにされた充溢のことであり、そこでは言葉は根付かない。けれども人はそこへ逃げるかもしれない。そこでは拾い物が幾らでもあるからだ。そして春になって耕せば、安住された言葉があるかもしれないからだ。だが作者は鬱蒼と茂る言葉の中で戦う=拓くということを避けてしまう多くのものたちに呼びかけることで、反って自己の闘いを決意しているのである。
 思想のための思想があるように、詩のための詩がある。だが、ここでは、ただ目的論的な進行(言葉を荒地で拾い上げること)を示すのではなく、より言語の実存的根拠から伸びやがるものと格闘することで詩を創り上げていくと言うダイナミクスが書かれていた。その力強さは、最後の呼びかけの連続を遠望まで響かせ、個人と個人の境界線(其れは0であり、且つ際限ない境界)へ浸透することで、見事に詩的体験へと導いてくれるのではないだろうか。

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