無言の空へ/ドクダミ五十号
 
空が何も言わなく成って

もう随分と時が流れた

雲が背中を見せて

流れ過ぎ去り

稜線に時折光が遊んでも


空の無い絵が貯まるに連れて

益々沈黙で地に押し付けられる


曙杉があの日

赤褐色にそびえて

それなりの散りゞを

風に舞わせても

何も聞き取れはしなかった


すっからかんの感性

こんな筈ではと

こめかみに爪を


山は描いたけれど

交わりを描けずに

筆先は稜線を彷徨う


声を聞かずに描けるか

失われの彼方の空よ

教えて欲しいのだ

碧から薄墨へと滲んでゆき

覆う事を専らとして居ずに


誤魔化しの一筆を加える前に
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