ピアニスト・シンデレラ。/元親 ミッド
演奏してはいなかった。
僕は見た。
音楽のスコールの中で、ピアノとダンスを踊っている彼らを。
激しい踊り、静かな踊り、楽しい踊り、淋しい踊り、
きれいに塗られた黒いネイル、細くて白い指をとり、
彼らはその晩、ピアノとダンスを踊り続けた。
時間は、無限だと思えるほどに。
やがて、シンデレラの魔法は解けて、
そうして名残惜しそうに、
彼らは日常へと帰っていった。
テーブルに残されたグラスが
落し物のガラスのハイヒールのように、寂しそうだった。
小さな、かわいいカフェの片隅で
ピアノは、やすらかな眠りに着くのだ。
夢の中で彼らを待ち続けながら。
再び、あのスコールの中で、
踊り狂うことを夢に見ながら。
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