水へ 夜へ/木立 悟
はだか しずく
つたう指
描くことなく切り
なぞる指
動くもののない
冬の対岸
砂に埋もれた
こがねの音
自身の影をついばむ鳥
暮れから暮れへ曳かれる舟
ひとつを ひとりを
照らす光
水に落ちて
灯は息を継ぐ
音は夜に
手を添える
熱としずく
くりかえしのない
土の感情
花を持つ手に降る氷雨
ひとつの風
鉄の震え
海を見ずに
灯を見る埠頭
水たまり
雨
そそぐ手
帰る手
夜の高さ
指で追い
星の無い冬
短い夜
霧を握る手はひらき
石の壁をこがねは昇る
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