千代紙/千波 一也
 

幼い日々が
やわらかく在ったのは
いつわりごと、が
易しかったから

不器用な手に
添われていたから


ひとつひとつの横顔は
おぼろ気だけれど
ぬくもる匂いは
きえ去らない

わたしのなかの
幻灯機


ひかりの粒を
寄せあつめたら
おもても裏もなくなるね

昨日は、あした
明日は、きのう

いろを極めた
影たちがつながる


華やかに
ことばを紡げたら、と
願いごとの続く限り
幸せはとぎれない

たよりなげな指たちが
とじては咲いて
咲いてはとじて

息吹は
おわらない






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