君の海馬/藤鈴呼
 
もしも 私に もっと時間が 有ったなら
生きる 全ての時間を 紡ぐことに 費やすんだ
そんなことを 思っていた

仕事を辞めて 時間が出来て
真っ先に 実行したのは ドライビング

帰る時間も 場所も 気にせずに
空腹と 心身の痛みを伴って 走り続けた

其処に 何が 有ったろう
底には 何が 溜まった だろう

遅刻する青年は 告げる
正門の内側に 寮が有る 安心感で

つい 扉を開けるのに
時間が掛かるのだ、と

人間は 切羽詰まった方が
実力を 発揮出来たりも するモンだから

クソ長い列車内で
車窓の風景も眺めずに 眠かけする者 有れば


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