敗走業者/高原漣
 
路上に駐車する中型の窓に『敗走中』とある

ああ逃げているのね、フムンと見送る

崩れてゆく戦線に溶けていく生命(いのち)、黄昏に沈む国

傾いた客船は船首から浸水し一気に沈む、折れる

つぎつぎと人は敗走する

そのもの蒼きシートを纏い河原の野に降り立つべし……

おお……言い伝えはまことじゃった……

感無量といったふうに老婆がすすり泣く。

用件を復唱しよう

『この世とおわかれする

時間指定はなさいますか?』
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