昇華する精霊たち/within
 
酸化物。絶え間ない失語。熱を奪われかじかむ指を揉み合わせる。健忘症の犬が猫におびえる。暖かい布団の中で絶望する真似事をしていたことを思い出す。気色の悪い皮膚を脱ぎたくて、もがき苦しむ。季節が変わるたびに、声も変わる。昇華する精霊たちが目の前の川を跳ねていく。

 n。わたしにはわからない。この島の呪いの秘密が。内にありて、外にあるもの。この島の精霊たちの息遣い。市場に人が集まる。いつの間にか人が減っている。皆、流れていく。もう得ることはないのか。静かに鴎が飛んでくる。足元に近づいては飛んでいく。深き海溝が待っている。白き糸で紡がれた闇。失うのも仕方なきこと。手紙を綴る。全ては意思のない動き。放たれた石つぶては波紋を結ぶ。消えるたびに訪れる美しさ。ハイフンで繋がれた愛情。足がもつれ、転びそうになる。先に言葉が転倒する。クジラの寝息が聞こえる。夜が明けるまで、ひっそりと燃える火を絶やさぬよう守り続ける。どうかこの暗闇から弱き我らを守りたまえ。

おはよう。
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