孤高の旅人/ただのみきや
 
月は 水底から仰ぐ小舟
雲の向こうをかろやかに滑り


 だが本当は流されているのは雲の方 
 月は自分の道を行くだけだ


きみは 月のように生きるのか
風に流されることもなく 
闇の中のその道を
ひとり孤独に渡るのか


ぼくは 雲のようにしか生きられない
流れ流され姿を変えて
つかみどころのない奴のまま
いつのまにか消えているのだろう


 地に足のついた人々からは
 ぼくらは似た者同士だったけれど


きみは 月のように行くのだね
ぼくには見えないその道を
漕ぎ出すその手の冷たさに
届かぬ思い 孤高の人よ

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