あずきの恋人 (最終回)/たま
けるようにと、教えてくれたはず。
生きていればかならず、未来はやってくる……。きっと、外山先生もそう願って、中学生に戻ることができたのだと、わたしは信じたい。
絵本が完成したら、もう、何もかも思い出になってしまうのだろうか。
ちょっぴり、くやしいけれど、描ききれなかった絵が、たくさんあったように思う。でも、だからこそ、わたしの絵本のなかには、「手でさわれないもの」がたくさんあって、わたしの思い出のなかでずっと、かがやき続けながら、いつか、この絵本を、外山先生にみてもらえたら、わたしの絵本は、ほんとうに完成するのだと思う。
その日がくるまで、わたしはつよく生きていたい。この絵本をいちばんに、見せたいひとのために。
さいごの一枚は、
イチローのうしろ姿をちいさく描いて、わたしはことばを添えたの。
わたしの未来の恋人へ。
おしまい。
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