滑車の前で/木立 悟
にもある青に
触れたくてしかたのない微笑みの
羽を失くした霊のはじまり
添えられた手のなか
分かれていく前の
小さな 小さな
水の混沌
雲のかけらがくすぶる道で
霊は夜を語り終える
石を覆いひしめく花が
昇る月の色にひらき
夜に満ちる声を聴く
ひとりの霊が飛び去る先に
白と黒の朝は終わる
重なる鉄の群れを見あげ
滴のなかの声を知るとき
わたしは光のはりつけから放たれ
残された飛べない霊の手のひらを
応えとともに握りしめ
誰もいない地へ歩いていく
もう一度 門が見える日に
もう一度 門が語る日に
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