ホチキス/夏美かをる
娘と一緒にドラッグストアーに行って
「好きなものをひとつだけ買ってあげるよ」
と言ったら
「ホチキスが欲しい」と言う
「ホチキスならうちに二つもあるでしょ。
塗り絵の本とか色マジックのセットは?」
と言っても
「私だけのホチキスがずっと欲しかった」
と言う
仕方がないからホチキスを買って持たせてあげると
まるで生まれたての子猫を受け取るかのように
慎重に両手を差し出し、そっと胸の前で抱える娘
もうすぐ九歳になる
車の中でも小さな袋を離さなかった彼女は
家に着くなり
乱暴に包みを破ってそれを取り出し
広告の紙やリサイクル紙を
片っぱしから留めにかかる
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