珊瑚の小径2(エッセイ)/そらの珊瑚
 
、最後のダ・カーポまでたどりついた、その時だった。突然ピアノの音がぷっつりと止んでしまったのである。
 ど、どどどどーした。おまえの心臓には……もういいか。
 ざわざわ。いや、実際にはしーんとしているのだが、観客の空気が『伴奏、どうしちゃったの?』と言っているのが手にとるようにわかる。舞台上のクラスメイトもあきらかに動揺している。
 この間の「伴奏が止まったらいけない」が図らずも呪いの言葉になってしまうとは!
 ごめんなさい、すみません。許してください。思いつく限りのありとあらゆる、詫びの言葉を叫びつつける母(もちろん心のなかですが)こ、ここで終わるのか! と思いきや、おそるおそる、といっ
[次のページ]
戻る   Point(9)