洗面器にわたしが溢れるとき/石田とわ
 


       うす汚れた魂を
       夜更けに洗う
       洗面器に冷たい水を張り
       ひとつまみの塩でもみ洗う
       不信と後悔がにじみ出て
       真っ赤になった指先に
       偽りと欲がこびりつく
       冷たい水に晒しても
       拭い去ることのできぬものたち
       刻みこまれた嘘とただしさ
       洗った魂を蛍光灯で透かし見る
       あぁ、まだそれは確かにあった
       わたしの核なるもの
       それがありさえすればいいのだ
       洗面器に溢れた諸々の汚濁を飲み干せば
       少し塩辛く、わたしに還り
       ほどよいしょっぱさで満たされる
       明日のために目を瞑り
       湿った魂に頬ずりをする









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