ジオラマ -朝靄プラットホーム-/霜天
 
朝が注がれている

遠心力に張り付くようにして
坂道が、下るバスの下で
行き先を隠している
畑の向こう、隠された朝日が
ここが今日だと示している

繋がりのない誰かと
肩を並べて揺れながら
霧に浮かんだ駅に滑り込む
誰も、何も、語らないのは
触合うことのない心が、ここにあるから

朝靄の、底
進む秒針の音以外は
ただ深々と
天気予報を信じての
傘だけの共通点

掻き分ける電車に
見慣れた景色が揺れた
プラットホームの向こう
花を待つ花壇が
警笛に震える
動き出す


降らない雨に空を見上げた
車窓から朝が注がれて
ここは今日だ、と告げている


ゆっくりと、動き出す
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