南天の幻惑/暗闇れもん
 
赤い実を摘む

意味の無い音が唇からこぼれた


庭に赤い実が生った

忘れていた裏庭に足を踏み入れる

音をたてて足元から崩れていく落ち葉

足音は知らぬ間に自然に奪われていた


鳥の声を聞きながら無心で実をもいでいく

悲鳴が聞こえた気がする

風の音かそうか

両手からこぼれていくのもかまわない

視界が赤く染まる

木々が揺れ雫が頬にあたる

冷たい雫は顎を伝い首筋を伝い深く入り込む

雪の残る庭に赤い実をばら撒く

ばらばらになる体

庭に丸くなり雪と土の匂いを嗅いだ


鼓動が聞こえる

お腹をすかせた小鳥達に囲まれながら

春の訪れを待った



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