苺の実/
草野春心
遅い昼食を済ませて
苺の実を一つ齧る
幾つもの
目には見えない高い壁が
頭のなかに聳え立ち
増えたり減ったりしている
煙草を一本吸う
むずかしいことに興味はなかった
風が吹く
昼の光の白さが一粒
また一粒、
どこかに吸いこまれてゆく
むずかしいことに興味はなかった
苺の実を一つ齧る
それから、ぎゅっと目を伏せて
けして目には見えない
激しい波が終わるのを待つ
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