樹化/すみたに
いない、広大な森林の中に埋もれているかと思えば、砂浜で一つぽつりと生える椰子の木となる。
僕が木になれば、木は孤独だろう。君が木になれば、木は自由だろう。
彷徨うことが自由なのかどうかは、君が判断をすればいい。定住することが束縛であるかは君が判断をすればいい。ただし、君は言うだろう。寒いよりは温かく過ごしたい、だから暖炉があって煙突のある家がいいと。不意な訪問者も歓迎するし、家の空気を排出する必要だってあるのだ。その通りさ。さあ、そろそろ言葉を失う。完全な木となる。植物園にでも寄贈しておいてくれ。いやだったら薪にすればいい。白蟻の餌食にだけはしてくれるな。暖炉にくべられれば、僕は喜んで燃料となり、君を温めよう。
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