きみを忘れやしない/石田とわ
つぶれたスーパーの裏には
ひとり郵便ポストが立っている
その赤いからだは色褪せて
ところどころが剥げている
スーパーとともに忘れられ
それでもそこにあり続け
待つことしかできぬ動けぬ身
通りすがりのだれかが
遠くのだれかに宛てた手紙を
入れてくれる日を夢みているのだろう
思いを伝える手紙を待っている
集配係のおじさんが
どうせ手紙などありゃしないと
忘れたふりをしてしまうだろう
手紙を書こう
ありがとうの一言を
人通りのすくない裏通りでは今日も
色褪せた郵便ポストがひとり
立っている
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