ながい歌/草野春心
 


  ながい歌のあとに
  みじかい言葉があった
  冬の夜の
  ひろい海のまえで
  そこらに捨ててきた
  古い自転車のことも忘れて
  ぼくたちは手をつなぎあった
  ながい歌のあとに
  言葉は舌じゃなく胸から生まれた
  音は喉じゃなく心から出た
  藍色の波が砂を舐める
  空き瓶の肌に月明りが落ちる
  ぼくたちはかがやいていた
  ながい歌のあとに



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