駆け足で泣くと。/きーろ
駆け足で泣くと、
電線は、雀の足でたわみわみ
夜は上を黒、下を青とし
地面は音もなくぎちぎちと詰まり
壁はただ綺麗でした。
お母さんは予言者のように、
私の行く末を指します。
あちら、こちら、そちら
どちら?そちら。
こちら?あちら。
私の行く末を、指で示します
私はそれが悔しくて、
駆け足で泣くと、
窓は閉じ、エアコンは風を吐き、
声は取れてく。
取れちゃうんですよ、声って。
知ってましたか?
少なくとも私は、
声って私だと思っていました。
びりびりと耳が痛むような
声の取れ方に驚くのみ。
けれども、驚いても、
駆けることはやめられません。
決まりなのです。
泣いているのです。
夜の縁にかかっていた青い幕が、
するすると降りるころには、
真っ黒でした。
真っ黒な夜は、私の眼前に。
口を大きくあけていました。
お母さんは、
私の行く末を知っていました。
けれども、夜がこんなにも暗く、
駆け足でも抜けられないくらい、
長く長く、続いていることは。
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