浮力/草野春心
 


  愛することができたものと
  愛せなかったものを
  苔色の水面に
  あなたが浮かべる



  夕暮れはしだいに  
  薄くひろくのびてゆく
  冬空を流れている、
  風を染める紅よりも軽い
  あなたの長い
  睫の影は静かに……



  水面へと落ち、
  ずぶずぶと沈んでゆくから



  僕も浮かべる
  つたえることができたことと
  ただひとつ
  いつかあなたに
  つたえたいこととを



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