雪の日に/梅昆布茶
雪なんて当たり前だった幼い頃
道南の辺境で借家の玄関の硝子戸を開ければ
一階はすべて雪の壁だったこと
なにせ長万部が唯一町の体裁をそなえたようなところで
物流の届かないそこで
僕の妹は生まれてすぐ死んだ
母自体がすでに栄養失調だったが
でもそこで北の海とたまにひぐまも出る山と鮭が僅かに登る小さな川が
僕の世界の原風景だと思っている
お上品な首都圏とかいうものや
羽田発の空の便は軒並み欠航なのだ
良いと悪いとはべつにしてそれがある意味文明化だとも思うし異論はない
ただ捨ててしまおうとしているものの中には
大切なものがなかっ
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