葡萄/紅月
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夜をくだる木の小舟に乗って、
流され、産み落とされた河口の、
なめらかな汽水の均衡のなかで、
嬰児の不鮮明な母音が浮沈し、
灰色の歓声、と、
どこまでも平たい原野、
手を、握る/開く
ふたつあれば事欠かない、
いまだ胸元に突き刺さった祈りの
あわい曲線をなぞりつづける血は、
乾いたと言ってください、
魚に血が流れていないならば、
魚は血によって流されることもない、
という逆説的な論理が、
原野には敷き詰められている、
敷き詰められたいつわりは、
乳白色に化石し、
どこまでも平たい原野へ、
錯誤の手が翳されると、
しだいに湾曲していく、その、
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