書こうとしたことを忘れてしまって/小原あき
に色が変わって見えた
書こうとしたことを忘れてしまって
君を愛した
丸裸だったけど
寒くはなかった
ひどく
甘かった
書こうとしたことを忘れてしまって
飲めやしない
海の水を汲んだ
あの鳥みたいに
泳ぎたかった
書こうとしたことを忘れてしまって
巣箱を作った
あの鳥は
りんごを少し
かじってった
書こうとしたことを忘れてしまって
見るたびに色の変わる羽根ペンと
海の水のインクで
足跡をスケッチした
足跡は水溜まりで
だけど
誰も揺らさない
ああ、これは
一体だれの
足跡だろう
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