書こうとしたことを忘れてしまって/小原あき
書こうとしたことを忘れてしまって
空をノックした
誰も出てきてはくれなかった
書こうとしたことを忘れてしまって
目を擦った
視界がさらにぼやけて
手からしょっぱい匂いがした
書こうとしたことを忘れてしまって
毛布に包まった
自分の体温は
やけにぬるく
なんの味もしなかった
書こうとしたことを忘れてしまって
水を飲んだ
一リットルのペットボトルが
空になっても
喉が渇いていた
書こうとしたことを忘れてしまって
水溜まりを揺らした
空から鳥が
飛び出してきた
書こうとしたことを忘れてしまって
写真を撮った
鳥が泳いでいた
見るたびに色
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