白い終曲/佐々宝砂
誰もいない部屋にうっすらと
埃がたまっていて
埃はほんのわずか
かきみだされた跡を残していて
白光にさらされて
ひとは乾いてゆく
終わりはないのだと
それはけしてこないのだと
埃がしずかにささやくので
ひとの耳はすっかり円錐で
なつかしくなまぐさい血も
ぎーぎーがーがーと鳴る機械音も
受け止めることができなくて
(しかし終わりはない決してない)
白い一日がはじまる
永遠の白い年月の最初の一日が
白く薄く雪より冷たく凍てて
誰もいない部屋で
埃に記されたかすかなみだれは
いましばらく許されてあるだろう
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