冬がくると悲しくなる/川上凌
冬がくると悲しくなる
きっと悲しくさせる要素が多いから。
雪原にぽつりと立ち竦んだ自分を想像するだけで、不安になる。
この町はわりと豪雪地帯で、
ドカドカ雪がふる。
朝になるとつもってるなんてザラで。
幼い頃からの光景なのに、
なんの汚れもない白を踏むと
申し訳なくなる。
だから、人の靴跡をなぞる。
そうして靴跡だらけの道ができて、
その踏み跡も風景の一部になる。
でもうちの犬は、
そんなのまるで気にしないように
だれも踏まない白の上に
小さく花柄を散らして
静かに春を植えるのだ。
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