一膳の箸/石田とわ
 






      あなたとわたしは一膳の箸でした
      年を経た槐の木から
      それはそれは丁寧につくられて
      生まれたのでしたね
      ある朝、わたしたちは
      ちいさな男の子の手に渡り
      箸としての第一歩を踏み出したのです
      
      はじめのころは箸の先でつつくばかりで
      まんぞくに箸の役割ができませんでしたね
      振り回されたり、ばってんにされたり
      あなたとわたしは懸命になって
      里芋をおいかけたのが嘘のようです
      楽しい時もかなしい時
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