途切れたものはいつもかならず手の届かない場所にしか居ない/ホロウ・シカエルボク
テーブルの上には要領を得ない文章が延々と書き殴られた紙片がある、綴じられたものから無理矢理に引きはがしたように形はみだらで、一度握りつぶしたみたいにくしゃっとなっている、五階の、家具のあまりない、安ホテルの一室みたいな部屋の小さなテーブルの上に、飲みかけた水がそのままに残されたコップと一緒に置かれているそんな紙片は、もうどうしようもなくなった人間が残した遺書のように見える、窓からは暮れかけた日の光が差し込んでいる、薄い雲がヨーグルトの上に溜まる水みたいに張った空から差し込むその光は、死にかけた老人が衰えた目で見る最後の光に似ている、部屋の窓は西に向かって開いているのだ、窓はわずかに左側が空
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)