その花のなまえ/マーブル
なくしものはないと
あの子は云った
わすれものもないと
あの子は笑うんだ
いつかの夕やけが ぼくの肩にとまった
片手に乗せた鳥が とおくへ飛び立った
宙を舞う羽の しなやかな つよさと共に
身軽なからだで
あの子は踊って
愛すべきものを
あの子は抱きしめてばかりいるんだ
「抱きしめる力がわからないの」と云って
クレパスからこぼれた 色彩の海のなか
はてしなく続く憧れは どこにゆくのかな
還らない場所なんて ないのだと 信じてみたんだよ
包みこんだら
あの子はふわり
するりぬけてゆくよ
空気みたいにね
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