十三階の女/草野大悟
炬燵に入って「行く年来る年」を見ていた沢井亜紀は、ふーっ、と大きなため息をついた。親元を離れ、このマンションの十三階で暮らすようになってもう四年になる。去年は、大学一年の時から付き合っていた男と二人で、この部屋のこの炬燵に足を突っ込んで「行く年来る年」を見ていた。その男とは、男の浮気が原因で別れた。それ以降、亜紀は特定の男と付き合ってはいない。
「明けましておめでとう」、そう口に出して、亜紀は思わず涙ぐんでしまった。一人きりの元旦になることは覚悟していたはずなのに。亜紀がもう一度、ふーっ、と大きなため息をついたその時、サイレンが響いた。その音は亜紀の住むマンションでピタリと止まった。窓を開け
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