この手につかむ/ベンジャミン
現実を求めながら夜を歩いた
そこかしこに散らばるそれに
触れてはみるものの
まるで伝わってこない
思考の淵をさまよって
一人 呆然として
目の前にあるコップが
つかもうとする手をすり抜ける
自分の頬に触れてみた
少しかさついて
少し温かい
それは現実だった
今 一番確かで鮮明な現実
あぁ どうか
私に触れてくれないか
私を撫でてくれないか
実感のない世界を
この手につかみたいんだ
胸を押さえて感じる
鼓動よりも今は
人肌から感じるぬくもりが
ここにいる私を教えてくれるから
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