黒髪彗星/ただのみきや
あなたのかたい頬
思いのほかやわらかくて
その冷やかな瞳にも
熱い涙は宿るのだが
心の奥深くに一つの扉があって
それは故郷へと繋がっている
絶対零度の沈黙
この地上の何よりも冷たい場所
冥王星のまだ向こう
きっとその辺りがあなたの故郷
天文学的確率
あるいは運命的衝突
致命的な傷(クレーター)から
マグマのような血を流し
ゆっくりと 日常という軌道を外れて行く
あなたを胸に抱いたまま
やがて永久に凍てついた
一つの遊星となって
あなたの黒い瞳には
そんな未来が映っていた
逃げ出すにはもう手遅れだ
火傷にも似た痛みで胸が疼いている
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