北風と太陽/佐々宝砂
陽です。空は真っ青です。
(あんなに白いのに、なんであいつはあったかいんだ、なんでだろう)
北風は考えこみました。もう吹き荒れようとはしませんでした。
北風はものごとを深く考えません。単純で、勝手で、自由なのです。考えこんだり、自由でなくなったりすると、北風は、北風ではなくなってしまうのです。北風でなくなった北風は、今は、太陽だけを見ていました。明るくて、真っ白な太陽だけを、見つめていました。
(ぼくはあいつんとこに行くんだ、きっと行くんだ、きっと行くんだ)
北風でなくなった北風は、いくども叫びました。
叫びながら、昇ってゆきました。
明るい
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