北風と太陽/佐々宝砂
た窓をガタピシ揺らしてみました。家のなかから、ぐちっぽいつぶやきがもれました。でも北風には聞こえません。聞こえても北風は気にしません。北風は、次に、ほころびはじめたばかりの梅の花を、すこし散らしてみました。花びらがはらはらと舞います。きれいな花びらです。北風は嬉しくなってぴゅうぴゅうと吹きました。花は全部散ってしまいました。
そうこうしているうちに、東の空が、ぼんやり明るい色になってきました。夜が明けるのです。やがて、太陽が顔を出しました。あたりは、ほんの少しずつ、本当に少しずつですが、あたたかくなってきました。
(なんだか、へんだぞ。へんだぞ。おかしいぞ)
北風は、自
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