アイルランド小景?/すみたに
 
スが主要交通の一つであるダブリンでは
太い道路を二階建てバスが幾つも
往来するのは壮観だ

かたやトラムや馬車も走る
そうしたひとつひとつ残されたものも
ふくめて消えた景観なのだ

光景が重層的に
現れた時のちょっとした乱視のような酔い
これを感じながら街を歩く

高架下にはやはり落書きがしてある
緑のペンキで乱雑にスペリング 
けれどわかるきもするその思い

ケルトの虎と呼ばれた好景気
静かに終わり暫くのアイルランド 
駅前の寂れはきっとそれ

ダブリンの小さなピザ屋に入ると
主人は客に漏らしていた
親父の癌の医療費が払えない

ぼくはそれもまた街並みと
思った、そしてスペインの女の子と
その弟と 冷めかけのピザを頬張った

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