不眠/葉leaf
 

目が覚めるたびにひとつの果実がつぶれる
一面に広がる光の前で
目を閉じることができない
生まれたままの姿で
死ぬことのできない光たち
僕が主食にする甘い果実をつぶしていく光たち
生死の隙間にいくつも並んでいる
僕の引き締まった顔
生から死へ 死から生へと流れていく朝の澱
おはよう
という声はいくつも内側に跳ね返ってくるだけで
誰にも届かないおはようはそれでも僕ばかりを目覚めさせる
鳥の声をいくつも重ねて
僕も鳥の声になって
朝の空を翔けていく
半透明の不分明の
ぶらさがっているような鳥の声
つぶれた果実を啜りながら
僕は光の裏側に 鳥の声の出所に
隠されて 守られて
生と死との隙間に構築された
不眠の砦に籠城し
兵糧不足を嘆き続けている
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