サンタになんか永遠になれない/夏美かをる
 
何回かは、
パーティの帰り、車の中で決まって涙が溢れた
家族と離れて暮らしたことのない旦那には理解できない涙
まだいくらか私にしおらしさが残っていた頃のこと


娘達はプレゼントの山に囲まれ大満足しながら眠りに落ちた
その寝顔を見て 母の声を思い出す
「サンタさんが入ってこれるように今晩は玄関のカギを開けておくからね」

家族5人で下町の団地に住んでいた頃
この日に食べる大のご馳走は鶏の丸焼き
普段何もしない父が、この時だけはナイフを握り
きれいに切り分けてお皿に乗せてくれた
デザートは勿論真っ赤な苺の乗ったショートケーキ
そして枕元に置かれていたプレゼント
そのたった一つのスペシャルな宝物を
幾夜も抱いて寝たっけ

お母さん…
誰かの幸せって
誰かの犠牲の上に成り立っていたのですね


娘達はもうすぐサンタの正体を知るだろう
だが 人を喜ばせることを心から喜ぶ余裕もない、
自称仏教徒のアメリカに住む日本人である私は
本当のサンタになんか永遠になれないのかもしれない
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