お見合い結婚/HAL
 
契約は明日でいいかなと不動産屋が喜ぶ答えを返す

もちろん不動産屋は嬉々として手付けの1千万を受け取り
領収書を書き印紙を貼って『では明日のいま頃に』と

鍵をぼくに渡して慇懃な礼をしてこの物件から立ち去る
ま 世間体とはこんなものかとこれでいいんだろうと

ぼくは想いながら窓のない柔らかそうな壁を手で撫でて
これなら想いのままにそこそこのものは入るよなと

フロイトがあるものの象徴とした好物件を手に入れた
僅かだけど懐かしさにも悦楽にも似たここの空気を吸い込む

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