他者の相 (生体反応の設計)/乾 加津也
 
わたしにある
他者の相

他者は正月にもちを食い
他者はゆっくり風呂に入る
他者は身繕い
他者は出かけ
他者は恭しい
他者は賀し
他者は帰り
他者は脱ぐ

他者を脱ぐ

ひとり
するりと
きょうらんの裸に
自他共に区別の
顔をおとす
目よりも
先に

他者はテレビをつける
他者は助太刀いたす
他者はおう、頼むぞ
他者は本場のパエリアに舌鼓を打ち
他者はマジックの剣に刺しとおされ
他者は一塁にけん制球をほうる
他者は惜しみなく愛を奪い
他者はロッテンマイヤーであり
他者はお口の恋人であり
他者がラーメン屋の出前を頼むと
他者はまいど

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