コンクリートのすき間に/wako
 
雨上がりの用水路
垂直のコンクリートを
ハサミをふり上げながら
カニが器用に歩く
ご挨拶をすると
立派なハサミをさらにふり上げて
立ち止まった

   カニ君
   待って!
   お願いがあるの
   ちょっと聞いて
   もつれて、もつれて
   どうにもならない糸があるの
   とうとう糸玉になってしまった

   誤解と疑念の塊

   こんな時人間はね
   ため息ついて
   見つめるだけ
   あとは神様の領域の話だから

   ここで出会ったのも何かの縁
   ねぇ、切って
   プツンと切って
   そして
   もう一度つな
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