イブの街で/HAL
 
おかしいとレノンを選んだきみ

風がとても耳に痛いけど訊かずにはいられなかった
歌に掻き消されないようにきみはいま幸せなのかなと

そうしたら今日別れたのと何となく分かっていた答え
でもどうするのかもぼくは訊かなかった訊けなかった

もうきみとのクリスマス・イブは終わってしまったこと
あの日のクリスマス・イブが最低だったことに胸が焼ける

だからほとんどきみにもきみの娘さんにも声を掛けず
あまり時間がないからとぼくはそこを立ち去ろうとした

そのとききみの唇がなにかを告げたかったかのように
ぼくには視えたしきっとそれは間違いではなかったろう

でもぼくは小さな女の子の頬に軽くキスをして踵を返した
もうビーチ・ボーイズのクリスマスは来ないんだと

だれにだって幸福なクリスマス・イブが来るわけじゃないと
長い人生だそんなクリスマス・イブもあるとコートの襟を立て

きみはきっとやり直したかったんだろうなと想いながら
ぼくは笑顔で賑わう街をだれも待ってはいない部屋へと帰る
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