溜息/レイヨウ
 


一瞬だったような気がした
永い一瞬のはじまりはじまり

鳩尾(みぞおち)に酷く重い鉛玉を撃ち込まれて
浅い呼吸で酸素を集め
二酸化炭素を深く吐き出す
この作業をここ数日ずっと繰り返している


恋だ。

自分の口から
とんでもなく安っぽい言葉が
転がり落ちた


私は、彼の歌に恋をした。



罪悪感と恐怖感が
あとを追いかけてくる
それでも
全身の細胞が疼いて求めるのは
彼というよりは彼の歌だ
彼の歌に潜っていたい


奥の奥まで。


彼が歌えば
彼の宇宙は私を易々と飲み込む
酸素はない
しかし何と綺麗な景色

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